Day3-Ⅱ ~The world you can change!!~
さて、昼休み。
席を離れ、会場外へと。
場外では、飲食や土産物の販売コーナーはもちろん、掘り出し物のアウトドア用品までが並んでいます。

また、アウトドアスポーツのちょっとした体験コーナーも設けられていました。
その中の一つ、スラックライン。

もともとはクライマーがロープを使って始めた綱渡りが、遊びの一つのジャンルとして確立したもの。
最近、着実に愛好者を増やし、今では世界大会も行われています。
そして、小さいながらもトップロープクライミングが体験できるウォールまで設置されていました。

来年の東京国体のマスコット『ゆりーと』も一足先にお目見え。

そろそろ中に戻ります。
今大会のメインスポンサーは、ご存知『MAMMUT』と新潟の酒造メーカーの雄『八海山』。

会場後方には専用ブースが設けられ、こちらも賑わっていました。
特にMAMMUTは、もともとクオリティの高い製品の叩き売りに近いセールだけあって大盛況。
さて、後方で賑わう観客を尻目に、ウォールではセッターたちの手により決勝ルートが完成しようとしています。


セッターチームのメンバーのひとり、平松幸祐氏は、ルートセットだけでなく競技中のMCも担当。
非常にノリがよく、またクライミング未経験者にもわかりやすい解説を交えて、場を盛り上げていました。
そして、ルートを構成しているホールド群。
両カテゴリー、全ラウンドを通してですが、各メーカーの目玉ホールドがふんだんに使われています。
その中でもやっぱり個人的に気になったのは、9月の展示会でも見た『GOD HAND』。



このホールドのカタログを見たサスケが、数日間不眠症に陥ったというのはあくまでも噂です。
ちなみに…
「このルート1本でいくらなんやろう」
…というのは下衆の発想というものです…。
開始間近となりました。
再び場内は暗転、ウォールは表情を変え、観客を飲み込むようにそびえ立ちます。

振り返れば、場内は人、人。


決勝は女子より。入場後、まず選手紹介が行われます。

そして、オブザベーション開始。





女子決勝ルートは、ウォール右からスタートし、中間から左ウォールへと続いていくという、長大なルート。

15mというウォールは決して短いわけではありませんが、国際大会レベルではかなり平凡な部類に入ります。
そのため、こうやってウォールとウォールをつなげるようなルートにしたり、トラバース(横移動)を増やしたりして、登攀距離を稼ぐわけです。
ということは、次の男子ルートはどうなるか・・・というのは、推して知るべしです。
競技開始。
一番手、シャーロット・デュリフ選手 from フランス。

登りを見ると、あまりコンペ的な感じじゃないなと思ったのですが、決勝に残るあたりはさすが8Cオンサイター。

順調に各ポイントを通過し、見せ場ともいえるウォールとウォールの隙間に入っていきます。

足使ってしっかりレスト。

さぁ入った。

完全に移りこみ…

さらにトラバース。

ここから上部へ。

うまくキョン(片膝を落として安定させるムーブ)を決めてハリボテ帯へ。

左足のトゥフックがニクイ。

そしてクロス。しかし、そこからの切り返しでフォールしてしまいました。

二番手。ミナ・マルコビッチ選手 from スロベニア。

2011年年間チャンプという、本来ならもう少し順番が後でもおかしくない選手。

よどみないクライミングで…

難なく左ウォールへ。


狭い動きもしっかりこなして上へとつなげます。

ここからはまさにお手本となるようなムーブの連続。







来るっ。

キターッ!!!!

ガッツポーズ!!

後続の選手は、この歓声で先方の完登を悟ったことでしょう。
登場するその後続の選手は
野口啓代選手。

2009、2010年のボルダリングワールドカップチャンピオン。
今回の印西大会に合わせ、その本来の専門であるボルダリングからコンバート。

ボルダリングで培った、非常にしなやかで思い切りのいい動きでハング帯を登りこなしていきます。


そして、壁と壁の隙間へと。

ステミング(両足を開いて突っ張る体勢)ができ、傾斜も殺せるので、ここは絶好のレストポイントとなります。
そして…
絶好のスマイルポイントともなります。

さぁ、観客の歓声をエネルギーに替え、左壁に突入。


順調にトラバースもこなしていき…


じわじわとゴールまでの距離を縮めていきます。

シャーロットのトゥフックに対して、彼女はヒールフック。

そして膝を反転、カウンターバランスでハリボテの縁へと。

バランスを崩しかけましたが、よく耐えます。

立て直し、ヒールフックを使って

ぐいと乗り込み、手を伸ばします。

しかし、取った!!…と思った瞬間足が外れ…


…残念。しかし、そのパフォーマンス、そして絶やさない笑顔に惜しみない拍手が送られます。

ロシア、ディナラ・ファクリディノワ選手。

準決勝では抜群のパフォーマンスを見せ、場内を沸かせた彼女。決勝では如何に。

国別で見ると、体の強さが目立つロシア。彼女も例にもれず、下部から安定した動きを見せます。


しかし、上部に差し掛かった辺りから少しずつ体勢を崩し始め…

結局、このクロスからの切り替えしでの体の振られに耐えられず、競技終了となりました。

日本人2人目。小田桃花選手。

オーストリア・イムストでワールドカップ初優勝を果たし、今年大ブレイクした彼女。
その勢いに乗れるか。





もちろんここではしっかりレスト。

上部直下も落ち着いて。

ハリボテの縁を取った瞬間、足が切れてしまいますが、なんとかリカバー。

他の選手と違い、右に乗り込み、手を伸ばすが…

惜しくも…

from オーストリア、ヨハンナ・エルンスト選手。

正確無比な登りで常に上位にランクしている彼女。



小田選手同様、彼女も右を…

しかし、これも同様に外してしまいます。

スロベニア、マヤ・ビドマー選手。

2007年、ワールドカップ加須大会優勝者。
あれから5年。若手ひしめく中、アスリートとしてはもうベテランの域と言っていいでしょう。
予選、準決勝では、その円熟味ある登りで完登劇を見せてくれましたが、フルマークはなるか?







いいテンポで最上部をうかがいます。

しかし残念、この直後に力尽きてしまいます。

さぁ女子、残すところあと一人、
キム・ジャイン選手。

ミナ選手が完登していますが、キム選手も完登すれば、カウントバックで彼女の優勝が決まります。
言い換えれば、完登する以外に彼女の優勝はないということでもあります。





力強く

柔らかい。


後半部へ。




あと一手!!

取った!?







残念!! 完登ならず。
しかし、魅せてくれました。

間にセットをはさむので、男子決勝までは少し時間があります。
その隙にデジカメの充電をしに車へ。
会場に戻ると、いい頃合い。

女子同様、まずは選手紹介から。
我らが安間佐千選手は、6番手のスタートです。

オブザベーション開始。






男子決勝ルートは、女子とは逆。ウォール左からスタートし、右へと抜けていくルート。

さぁ両カテゴリー含めて、最終となるラウンド。



開始です。
一番手、フランス、ロマン・デグランジェ選手。


男子フランスチームで唯一の決勝進出を果たしたチームのエース。
エースの意地を見せられるか。


女子同様、この隙間はレストポイントとなります。

右に移ってからは、少しクライムダウンしていきます。


一番下まで下りたところで、ここもレストポイント。

そこからは上がるのみ。





驚くことにロマン選手、一番手ながら最上部まで到達してしまいます。そして…

この次の一手でフォール。

なんと終了点手前まで。
準決勝で書いたように、競技順は前のラウンドで成績が悪かった選手から。
ロマン選手のパフォーマンスが神掛かっていたのか・・・それとも・・・。
2番手、ショーン・マッコール選手 from カナダ。



















当然のように最上部に到達し…

そして当然のように…





かなり余裕をもって完登したように見えました。
ショーン選手は、今シーズン参戦している大会では常に決勝に進出。
前々回の中国大会では優勝もしています。
しかし、後に控えている選手たちも非常な強者ぞろい。
しかも準決勝の時点での順位はショーン選手より上。
ということは…
3番手、ミン・ヒュンビン選手 from 韓国。


前ラウンド同様、決勝でもぶれない強い動きで観客を魅了します。









全く危なげなく最上部に到達したミン選手。ここからとんでもない動きを見せます。









なんとクロスランジ(進行方向とは逆の手で飛びつく技)で終了ホールドをキャッチ。
通常のランジより難度が高いこのムーブ。
相当に余裕と自信がなければ選択しないでしょう。
下部からの疲労が徐々に蓄積された最上部でそれをやってのけるとは…。
恐るべしアジアの小さな巨人。
ちなみにこのムーブは、須崎の大きな巨人ことMAX〇浦がさっそく明日やってくれることと思います。
…あ、肩壊さないようにね。
ノルウェー、マグナス・ミトボ選手。


レストポイントで余裕っぷりをアピール。

そのアピール通り…

完登!!


オーストリア、マリオ・レクナー選手。


同国のヤコブ・シューベルト選手の陰に隠れてしまっている感があるマリオ選手。
しかし、彼もまたクライミング大国オーストリア選りすぐりのクライマー。



それを証明するかのごとく…


完登。

6番手。
安間佐千選手。
















































ホームでの大会。
続出する完登者。
年間優勝への王手。
そのプレッシャーは如何許りか。
ただただ、驚嘆するばかり。
さて、気を取り直して…
オーストリア、ヤコブ・シューベルト選手。

ライバルの完登に何を思う。







もはや落ちるイメージが場内の熱気にかき消されている感があります。
おそらく次の選手も落ちることはないでしょう。
そして、次の選手は最後の一人。
5年ぶりに日本で行われたリードクライミングのワールドカップ。
この印西大会のトリはこの男。

ラモン・ジュリアン・プッチブランカ


















完登者、実に7名。
男子決勝に起こったちょっとした(?)ミラクルを最後に印西大会の全競技は終了。

壁がまた少し表情を変えていきます。

表彰式です。
まず女子。

3位。マヤ・ビドマー選手。ベテランの意地を見せました。

2位。キム・ジャイン選手。小柄な体から繰り出すムーブは強く美しい。

そして1位。ミナ・マルコビッチ選手。準決勝7位から奇跡の逆転!! 勝負強さを見せつけました。


続いて男子。

3位。安間佐千選手。数々のプレッシャーと闘いながら堂々の表彰台!!

2位。ヤコブ・シューベルト選手。今回は安間選手に競り勝ちました!! 来年も楽しみです。

そして1位。ラモン・ジュリアン・プッチブランカ選手。無限の持久力ここに極まれり!!


退席時、自分たちを見ている子供たちに気付くヤコブ。

ささと子供たちに花を渡す彼。とっさのことでカメラブレる、子ども入ってないw

閉会です。
IFSC会長、マルコ・スコラリス氏が閉会を宣言、ワールドカップ印西大会は無事幕を閉じました。

終わりました。
何かもう別世界でしたね。
クライミングっていろいろなジャンルがあるので、それが故に誤解されやすいところもあると思うのですが、いろいろなジャンルあれど、総じて『冒険的要素』が強い遊びだと思います。それは、一般に『危険』と置き換えられることもあるかとは思いますが。
今回のワールドカップに代表される競技としてのクライミングは、可能な限りその冒険的要素(危険)は排除して、その上で肉体の限界に挑むという位置づけ。
それは、つまり野球やサッカーのようなスポーツとほぼ同じ線上にあるものと言えるでしょう。
現在、オリンピック競技の有力候補として挙がっていることも、それを端的に示していると思います。
それによる弊害もあるでしょうが、それなりに認知され底辺が広がるということは喜ばしいこと。
事実、今回の大会を見たことをきっかけにクライミングを始める人も出てくるでしょう。
『クライミングってかっこいい』っていう動機でとりあえずは十分かと。
実際、世界のトップの登りは、ありえないほどかっこよかったですから。
あと、クライミングを『観る』という楽しさも改めて実感できました。
『エンターテイメントとしてのクライミング』というジャンルが日本でも確立されつつあるということ。
もちろんそれは出場選手、そして演出側の質に左右されるものでもあるとは思いますが…。
それらさえ満たせば、多少の対価を払ってでも観に行く魅力がクライミングにはあると思います。
こういった、いろいろな意味での最先端を見ることができたのは、非常に収穫でした。
…と、少しだけ回りくどく小難しいことを考えてしまいましたが、とにかく楽しめました。
ところで、話は現在に戻ってしまいますが、安間佐千選手。
先日スロベニアで行われたワールドカップ最終戦、クラニ大会にて2位入賞。
総合ポイントで他選手を引き離し、悲願であったワールドチャンピオンとなりました。
リードクライミングのワールドチャンピオンは、かの平山ユージ氏以来の快挙。
その後もスペインはシウラナの岩場にて、極難ルート、ラ・ランブラ(5.15a)を完登するなど、絶好調な様子。
平山ユージ氏がワールドチャンピオンになったのが、1998年、2000年の2回。
そこからほぼ10年後、チャンピオンとなった安間佐千。
国内での盛り上がり様を見ると、彼に続くクライマーが現れるのはそう遠くない日なのかもしれませんね。
さて、次の国内開催はいつになるでしょう。
やるんだったら次回は名古屋か大阪あたりにしてほしいですね。
しかし、キム・ジャインかわいかったな~。

おわり
席を離れ、会場外へと。
場外では、飲食や土産物の販売コーナーはもちろん、掘り出し物のアウトドア用品までが並んでいます。

また、アウトドアスポーツのちょっとした体験コーナーも設けられていました。
その中の一つ、スラックライン。

もともとはクライマーがロープを使って始めた綱渡りが、遊びの一つのジャンルとして確立したもの。
最近、着実に愛好者を増やし、今では世界大会も行われています。
そして、小さいながらもトップロープクライミングが体験できるウォールまで設置されていました。

来年の東京国体のマスコット『ゆりーと』も一足先にお目見え。

そろそろ中に戻ります。
今大会のメインスポンサーは、ご存知『MAMMUT』と新潟の酒造メーカーの雄『八海山』。

会場後方には専用ブースが設けられ、こちらも賑わっていました。
特にMAMMUTは、もともとクオリティの高い製品の叩き売りに近いセールだけあって大盛況。
さて、後方で賑わう観客を尻目に、ウォールではセッターたちの手により決勝ルートが完成しようとしています。


セッターチームのメンバーのひとり、平松幸祐氏は、ルートセットだけでなく競技中のMCも担当。
非常にノリがよく、またクライミング未経験者にもわかりやすい解説を交えて、場を盛り上げていました。
そして、ルートを構成しているホールド群。
両カテゴリー、全ラウンドを通してですが、各メーカーの目玉ホールドがふんだんに使われています。
その中でもやっぱり個人的に気になったのは、9月の展示会でも見た『GOD HAND』。



このホールドのカタログを見たサスケが、数日間不眠症に陥ったというのはあくまでも噂です。
ちなみに…
「このルート1本でいくらなんやろう」
…というのは下衆の発想というものです…。
開始間近となりました。
再び場内は暗転、ウォールは表情を変え、観客を飲み込むようにそびえ立ちます。

振り返れば、場内は人、人。


決勝は女子より。入場後、まず選手紹介が行われます。

そして、オブザベーション開始。





女子決勝ルートは、ウォール右からスタートし、中間から左ウォールへと続いていくという、長大なルート。

15mというウォールは決して短いわけではありませんが、国際大会レベルではかなり平凡な部類に入ります。
そのため、こうやってウォールとウォールをつなげるようなルートにしたり、トラバース(横移動)を増やしたりして、登攀距離を稼ぐわけです。
ということは、次の男子ルートはどうなるか・・・というのは、推して知るべしです。
競技開始。
一番手、シャーロット・デュリフ選手 from フランス。

登りを見ると、あまりコンペ的な感じじゃないなと思ったのですが、決勝に残るあたりはさすが8Cオンサイター。

順調に各ポイントを通過し、見せ場ともいえるウォールとウォールの隙間に入っていきます。

足使ってしっかりレスト。

さぁ入った。

完全に移りこみ…

さらにトラバース。

ここから上部へ。

うまくキョン(片膝を落として安定させるムーブ)を決めてハリボテ帯へ。

左足のトゥフックがニクイ。

そしてクロス。しかし、そこからの切り返しでフォールしてしまいました。

二番手。ミナ・マルコビッチ選手 from スロベニア。

2011年年間チャンプという、本来ならもう少し順番が後でもおかしくない選手。

よどみないクライミングで…

難なく左ウォールへ。


狭い動きもしっかりこなして上へとつなげます。

ここからはまさにお手本となるようなムーブの連続。







来るっ。

キターッ!!!!

ガッツポーズ!!

後続の選手は、この歓声で先方の完登を悟ったことでしょう。
登場するその後続の選手は
野口啓代選手。

2009、2010年のボルダリングワールドカップチャンピオン。
今回の印西大会に合わせ、その本来の専門であるボルダリングからコンバート。

ボルダリングで培った、非常にしなやかで思い切りのいい動きでハング帯を登りこなしていきます。


そして、壁と壁の隙間へと。

ステミング(両足を開いて突っ張る体勢)ができ、傾斜も殺せるので、ここは絶好のレストポイントとなります。
そして…
絶好のスマイルポイントともなります。

さぁ、観客の歓声をエネルギーに替え、左壁に突入。


順調にトラバースもこなしていき…


じわじわとゴールまでの距離を縮めていきます。

シャーロットのトゥフックに対して、彼女はヒールフック。

そして膝を反転、カウンターバランスでハリボテの縁へと。

バランスを崩しかけましたが、よく耐えます。

立て直し、ヒールフックを使って

ぐいと乗り込み、手を伸ばします。

しかし、取った!!…と思った瞬間足が外れ…


…残念。しかし、そのパフォーマンス、そして絶やさない笑顔に惜しみない拍手が送られます。

ロシア、ディナラ・ファクリディノワ選手。

準決勝では抜群のパフォーマンスを見せ、場内を沸かせた彼女。決勝では如何に。

国別で見ると、体の強さが目立つロシア。彼女も例にもれず、下部から安定した動きを見せます。


しかし、上部に差し掛かった辺りから少しずつ体勢を崩し始め…

結局、このクロスからの切り替えしでの体の振られに耐えられず、競技終了となりました。

日本人2人目。小田桃花選手。

オーストリア・イムストでワールドカップ初優勝を果たし、今年大ブレイクした彼女。
その勢いに乗れるか。





もちろんここではしっかりレスト。

上部直下も落ち着いて。

ハリボテの縁を取った瞬間、足が切れてしまいますが、なんとかリカバー。

他の選手と違い、右に乗り込み、手を伸ばすが…

惜しくも…

from オーストリア、ヨハンナ・エルンスト選手。

正確無比な登りで常に上位にランクしている彼女。



小田選手同様、彼女も右を…

しかし、これも同様に外してしまいます。

スロベニア、マヤ・ビドマー選手。

2007年、ワールドカップ加須大会優勝者。
あれから5年。若手ひしめく中、アスリートとしてはもうベテランの域と言っていいでしょう。
予選、準決勝では、その円熟味ある登りで完登劇を見せてくれましたが、フルマークはなるか?







いいテンポで最上部をうかがいます。

しかし残念、この直後に力尽きてしまいます。

さぁ女子、残すところあと一人、
キム・ジャイン選手。

ミナ選手が完登していますが、キム選手も完登すれば、カウントバックで彼女の優勝が決まります。
言い換えれば、完登する以外に彼女の優勝はないということでもあります。





力強く

柔らかい。


後半部へ。




あと一手!!

取った!?







残念!! 完登ならず。
しかし、魅せてくれました。

間にセットをはさむので、男子決勝までは少し時間があります。
その隙にデジカメの充電をしに車へ。
会場に戻ると、いい頃合い。

女子同様、まずは選手紹介から。
我らが安間佐千選手は、6番手のスタートです。

オブザベーション開始。






男子決勝ルートは、女子とは逆。ウォール左からスタートし、右へと抜けていくルート。

さぁ両カテゴリー含めて、最終となるラウンド。



開始です。
一番手、フランス、ロマン・デグランジェ選手。


男子フランスチームで唯一の決勝進出を果たしたチームのエース。
エースの意地を見せられるか。


女子同様、この隙間はレストポイントとなります。

右に移ってからは、少しクライムダウンしていきます。


一番下まで下りたところで、ここもレストポイント。

そこからは上がるのみ。





驚くことにロマン選手、一番手ながら最上部まで到達してしまいます。そして…

この次の一手でフォール。

なんと終了点手前まで。
準決勝で書いたように、競技順は前のラウンドで成績が悪かった選手から。
ロマン選手のパフォーマンスが神掛かっていたのか・・・それとも・・・。
2番手、ショーン・マッコール選手 from カナダ。



















当然のように最上部に到達し…

そして当然のように…





かなり余裕をもって完登したように見えました。
ショーン選手は、今シーズン参戦している大会では常に決勝に進出。
前々回の中国大会では優勝もしています。
しかし、後に控えている選手たちも非常な強者ぞろい。
しかも準決勝の時点での順位はショーン選手より上。
ということは…
3番手、ミン・ヒュンビン選手 from 韓国。


前ラウンド同様、決勝でもぶれない強い動きで観客を魅了します。









全く危なげなく最上部に到達したミン選手。ここからとんでもない動きを見せます。









なんとクロスランジ(進行方向とは逆の手で飛びつく技)で終了ホールドをキャッチ。
通常のランジより難度が高いこのムーブ。
相当に余裕と自信がなければ選択しないでしょう。
下部からの疲労が徐々に蓄積された最上部でそれをやってのけるとは…。
恐るべしアジアの小さな巨人。
ちなみにこのムーブは、須崎の大きな巨人ことMAX〇浦がさっそく明日やってくれることと思います。
…あ、肩壊さないようにね。
ノルウェー、マグナス・ミトボ選手。


レストポイントで余裕っぷりをアピール。

そのアピール通り…

完登!!


オーストリア、マリオ・レクナー選手。


同国のヤコブ・シューベルト選手の陰に隠れてしまっている感があるマリオ選手。
しかし、彼もまたクライミング大国オーストリア選りすぐりのクライマー。



それを証明するかのごとく…


完登。

6番手。
安間佐千選手。
















































ホームでの大会。
続出する完登者。
年間優勝への王手。
そのプレッシャーは如何許りか。
ただただ、驚嘆するばかり。
さて、気を取り直して…
オーストリア、ヤコブ・シューベルト選手。

ライバルの完登に何を思う。







もはや落ちるイメージが場内の熱気にかき消されている感があります。
おそらく次の選手も落ちることはないでしょう。
そして、次の選手は最後の一人。
5年ぶりに日本で行われたリードクライミングのワールドカップ。
この印西大会のトリはこの男。

ラモン・ジュリアン・プッチブランカ


















完登者、実に7名。
男子決勝に起こったちょっとした(?)ミラクルを最後に印西大会の全競技は終了。

壁がまた少し表情を変えていきます。

表彰式です。
まず女子。

3位。マヤ・ビドマー選手。ベテランの意地を見せました。

2位。キム・ジャイン選手。小柄な体から繰り出すムーブは強く美しい。

そして1位。ミナ・マルコビッチ選手。準決勝7位から奇跡の逆転!! 勝負強さを見せつけました。


続いて男子。

3位。安間佐千選手。数々のプレッシャーと闘いながら堂々の表彰台!!

2位。ヤコブ・シューベルト選手。今回は安間選手に競り勝ちました!! 来年も楽しみです。

そして1位。ラモン・ジュリアン・プッチブランカ選手。無限の持久力ここに極まれり!!


退席時、自分たちを見ている子供たちに気付くヤコブ。

ささと子供たちに花を渡す彼。とっさのことでカメラブレる、子ども入ってないw

閉会です。
IFSC会長、マルコ・スコラリス氏が閉会を宣言、ワールドカップ印西大会は無事幕を閉じました。

終わりました。
何かもう別世界でしたね。
クライミングっていろいろなジャンルがあるので、それが故に誤解されやすいところもあると思うのですが、いろいろなジャンルあれど、総じて『冒険的要素』が強い遊びだと思います。それは、一般に『危険』と置き換えられることもあるかとは思いますが。
今回のワールドカップに代表される競技としてのクライミングは、可能な限りその冒険的要素(危険)は排除して、その上で肉体の限界に挑むという位置づけ。
それは、つまり野球やサッカーのようなスポーツとほぼ同じ線上にあるものと言えるでしょう。
現在、オリンピック競技の有力候補として挙がっていることも、それを端的に示していると思います。
それによる弊害もあるでしょうが、それなりに認知され底辺が広がるということは喜ばしいこと。
事実、今回の大会を見たことをきっかけにクライミングを始める人も出てくるでしょう。
『クライミングってかっこいい』っていう動機でとりあえずは十分かと。
実際、世界のトップの登りは、ありえないほどかっこよかったですから。
あと、クライミングを『観る』という楽しさも改めて実感できました。
『エンターテイメントとしてのクライミング』というジャンルが日本でも確立されつつあるということ。
もちろんそれは出場選手、そして演出側の質に左右されるものでもあるとは思いますが…。
それらさえ満たせば、多少の対価を払ってでも観に行く魅力がクライミングにはあると思います。
こういった、いろいろな意味での最先端を見ることができたのは、非常に収穫でした。
…と、少しだけ回りくどく小難しいことを考えてしまいましたが、とにかく楽しめました。
ところで、話は現在に戻ってしまいますが、安間佐千選手。
先日スロベニアで行われたワールドカップ最終戦、クラニ大会にて2位入賞。
総合ポイントで他選手を引き離し、悲願であったワールドチャンピオンとなりました。
リードクライミングのワールドチャンピオンは、かの平山ユージ氏以来の快挙。
その後もスペインはシウラナの岩場にて、極難ルート、ラ・ランブラ(5.15a)を完登するなど、絶好調な様子。
平山ユージ氏がワールドチャンピオンになったのが、1998年、2000年の2回。
そこからほぼ10年後、チャンピオンとなった安間佐千。
国内での盛り上がり様を見ると、彼に続くクライマーが現れるのはそう遠くない日なのかもしれませんね。
さて、次の国内開催はいつになるでしょう。
やるんだったら次回は名古屋か大阪あたりにしてほしいですね。
しかし、キム・ジャインかわいかったな~。

おわり