WC Inzai 2014
連休中は多くのご来店をいただき、ありがとうございました。
最終日の幾分空いていた時間帯を利用して、余っていたコンパネを使って本棚をつくりました。

若干カオスなセレクトはご愛嬌。

さて、少し前の話になりますが、千葉の印西で行われたワールドカップの観戦に行ってきました。

木曜のみにコンペ後に荷物詰めこみ出発。

途中、山梨の瑞牆に立ち寄り、



半睡眠の身体を起こしつつ岩登り。







数日前に雨が降ったのか、一部の有名課題は濡れていましたが、その日の天候は最高。
何よりロケーションが素晴らしかった。
また行こう。

その日のうちに千葉に移動し、翌日会場へ。

ここでも楽しませていただきました。













































初来日のアダム・オンドラが絡んだ男子決勝もすごかったですが、個人的には女子。
女子は、2年前の印西大会でのキム・ジャイン対ミナ・マルコビッチのリベンジマッチといった感じでした。
ハイライトは決勝でのマルコビッチ。
あれだけ中間部でマゴマゴしていた中からリカバーして、終了点タッチまで迫るさまには鳥肌を禁じえず。
まさに執念の登り。
優勝こそ完登のジャインに譲るかたちとなりましたが、今大会で一番感動した登りでした。
あと、カチ帯でのマヤ・ビドマーの安定っぷりもヤバかった。
国内開催のワールドカップはこのところリードが続いているので、次はボルダリングの方を観てみたいですね。
最終日の幾分空いていた時間帯を利用して、余っていたコンパネを使って本棚をつくりました。

若干カオスなセレクトはご愛嬌。

さて、少し前の話になりますが、千葉の印西で行われたワールドカップの観戦に行ってきました。

木曜のみにコンペ後に荷物詰めこみ出発。

途中、山梨の瑞牆に立ち寄り、



半睡眠の身体を起こしつつ岩登り。







数日前に雨が降ったのか、一部の有名課題は濡れていましたが、その日の天候は最高。
何よりロケーションが素晴らしかった。
また行こう。

その日のうちに千葉に移動し、翌日会場へ。

ここでも楽しませていただきました。













































初来日のアダム・オンドラが絡んだ男子決勝もすごかったですが、個人的には女子。
女子は、2年前の印西大会でのキム・ジャイン対ミナ・マルコビッチのリベンジマッチといった感じでした。
ハイライトは決勝でのマルコビッチ。
あれだけ中間部でマゴマゴしていた中からリカバーして、終了点タッチまで迫るさまには鳥肌を禁じえず。
まさに執念の登り。
優勝こそ完登のジャインに譲るかたちとなりましたが、今大会で一番感動した登りでした。
あと、カチ帯でのマヤ・ビドマーの安定っぷりもヤバかった。
国内開催のワールドカップはこのところリードが続いているので、次はボルダリングの方を観てみたいですね。
Day3-Ⅱ ~The world you can change!!~
さて、昼休み。
席を離れ、会場外へと。
場外では、飲食や土産物の販売コーナーはもちろん、掘り出し物のアウトドア用品までが並んでいます。

また、アウトドアスポーツのちょっとした体験コーナーも設けられていました。
その中の一つ、スラックライン。

もともとはクライマーがロープを使って始めた綱渡りが、遊びの一つのジャンルとして確立したもの。
最近、着実に愛好者を増やし、今では世界大会も行われています。
そして、小さいながらもトップロープクライミングが体験できるウォールまで設置されていました。

来年の東京国体のマスコット『ゆりーと』も一足先にお目見え。

そろそろ中に戻ります。
今大会のメインスポンサーは、ご存知『MAMMUT』と新潟の酒造メーカーの雄『八海山』。

会場後方には専用ブースが設けられ、こちらも賑わっていました。
特にMAMMUTは、もともとクオリティの高い製品の叩き売りに近いセールだけあって大盛況。
さて、後方で賑わう観客を尻目に、ウォールではセッターたちの手により決勝ルートが完成しようとしています。


セッターチームのメンバーのひとり、平松幸祐氏は、ルートセットだけでなく競技中のMCも担当。
非常にノリがよく、またクライミング未経験者にもわかりやすい解説を交えて、場を盛り上げていました。
そして、ルートを構成しているホールド群。
両カテゴリー、全ラウンドを通してですが、各メーカーの目玉ホールドがふんだんに使われています。
その中でもやっぱり個人的に気になったのは、9月の展示会でも見た『GOD HAND』。



このホールドのカタログを見たサスケが、数日間不眠症に陥ったというのはあくまでも噂です。
ちなみに…
「このルート1本でいくらなんやろう」
…というのは下衆の発想というものです…。
開始間近となりました。
再び場内は暗転、ウォールは表情を変え、観客を飲み込むようにそびえ立ちます。

振り返れば、場内は人、人。


決勝は女子より。入場後、まず選手紹介が行われます。

そして、オブザベーション開始。





女子決勝ルートは、ウォール右からスタートし、中間から左ウォールへと続いていくという、長大なルート。

15mというウォールは決して短いわけではありませんが、国際大会レベルではかなり平凡な部類に入ります。
そのため、こうやってウォールとウォールをつなげるようなルートにしたり、トラバース(横移動)を増やしたりして、登攀距離を稼ぐわけです。
ということは、次の男子ルートはどうなるか・・・というのは、推して知るべしです。
競技開始。
一番手、シャーロット・デュリフ選手 from フランス。

登りを見ると、あまりコンペ的な感じじゃないなと思ったのですが、決勝に残るあたりはさすが8Cオンサイター。

順調に各ポイントを通過し、見せ場ともいえるウォールとウォールの隙間に入っていきます。

足使ってしっかりレスト。

さぁ入った。

完全に移りこみ…

さらにトラバース。

ここから上部へ。

うまくキョン(片膝を落として安定させるムーブ)を決めてハリボテ帯へ。

左足のトゥフックがニクイ。

そしてクロス。しかし、そこからの切り返しでフォールしてしまいました。

二番手。ミナ・マルコビッチ選手 from スロベニア。

2011年年間チャンプという、本来ならもう少し順番が後でもおかしくない選手。

よどみないクライミングで…

難なく左ウォールへ。


狭い動きもしっかりこなして上へとつなげます。

ここからはまさにお手本となるようなムーブの連続。







来るっ。

キターッ!!!!

ガッツポーズ!!

後続の選手は、この歓声で先方の完登を悟ったことでしょう。
登場するその後続の選手は
野口啓代選手。

2009、2010年のボルダリングワールドカップチャンピオン。
今回の印西大会に合わせ、その本来の専門であるボルダリングからコンバート。

ボルダリングで培った、非常にしなやかで思い切りのいい動きでハング帯を登りこなしていきます。


そして、壁と壁の隙間へと。

ステミング(両足を開いて突っ張る体勢)ができ、傾斜も殺せるので、ここは絶好のレストポイントとなります。
そして…
絶好のスマイルポイントともなります。

さぁ、観客の歓声をエネルギーに替え、左壁に突入。


順調にトラバースもこなしていき…


じわじわとゴールまでの距離を縮めていきます。

シャーロットのトゥフックに対して、彼女はヒールフック。

そして膝を反転、カウンターバランスでハリボテの縁へと。

バランスを崩しかけましたが、よく耐えます。

立て直し、ヒールフックを使って

ぐいと乗り込み、手を伸ばします。

しかし、取った!!…と思った瞬間足が外れ…


…残念。しかし、そのパフォーマンス、そして絶やさない笑顔に惜しみない拍手が送られます。

ロシア、ディナラ・ファクリディノワ選手。

準決勝では抜群のパフォーマンスを見せ、場内を沸かせた彼女。決勝では如何に。

国別で見ると、体の強さが目立つロシア。彼女も例にもれず、下部から安定した動きを見せます。


しかし、上部に差し掛かった辺りから少しずつ体勢を崩し始め…

結局、このクロスからの切り替えしでの体の振られに耐えられず、競技終了となりました。

日本人2人目。小田桃花選手。

オーストリア・イムストでワールドカップ初優勝を果たし、今年大ブレイクした彼女。
その勢いに乗れるか。





もちろんここではしっかりレスト。

上部直下も落ち着いて。

ハリボテの縁を取った瞬間、足が切れてしまいますが、なんとかリカバー。

他の選手と違い、右に乗り込み、手を伸ばすが…

惜しくも…

from オーストリア、ヨハンナ・エルンスト選手。

正確無比な登りで常に上位にランクしている彼女。



小田選手同様、彼女も右を…

しかし、これも同様に外してしまいます。

スロベニア、マヤ・ビドマー選手。

2007年、ワールドカップ加須大会優勝者。
あれから5年。若手ひしめく中、アスリートとしてはもうベテランの域と言っていいでしょう。
予選、準決勝では、その円熟味ある登りで完登劇を見せてくれましたが、フルマークはなるか?







いいテンポで最上部をうかがいます。

しかし残念、この直後に力尽きてしまいます。

さぁ女子、残すところあと一人、
キム・ジャイン選手。

ミナ選手が完登していますが、キム選手も完登すれば、カウントバックで彼女の優勝が決まります。
言い換えれば、完登する以外に彼女の優勝はないということでもあります。





力強く

柔らかい。


後半部へ。




あと一手!!

取った!?







残念!! 完登ならず。
しかし、魅せてくれました。

間にセットをはさむので、男子決勝までは少し時間があります。
その隙にデジカメの充電をしに車へ。
会場に戻ると、いい頃合い。

女子同様、まずは選手紹介から。
我らが安間佐千選手は、6番手のスタートです。

オブザベーション開始。






男子決勝ルートは、女子とは逆。ウォール左からスタートし、右へと抜けていくルート。

さぁ両カテゴリー含めて、最終となるラウンド。



開始です。
一番手、フランス、ロマン・デグランジェ選手。


男子フランスチームで唯一の決勝進出を果たしたチームのエース。
エースの意地を見せられるか。


女子同様、この隙間はレストポイントとなります。

右に移ってからは、少しクライムダウンしていきます。


一番下まで下りたところで、ここもレストポイント。

そこからは上がるのみ。





驚くことにロマン選手、一番手ながら最上部まで到達してしまいます。そして…

この次の一手でフォール。

なんと終了点手前まで。
準決勝で書いたように、競技順は前のラウンドで成績が悪かった選手から。
ロマン選手のパフォーマンスが神掛かっていたのか・・・それとも・・・。
2番手、ショーン・マッコール選手 from カナダ。



















当然のように最上部に到達し…

そして当然のように…





かなり余裕をもって完登したように見えました。
ショーン選手は、今シーズン参戦している大会では常に決勝に進出。
前々回の中国大会では優勝もしています。
しかし、後に控えている選手たちも非常な強者ぞろい。
しかも準決勝の時点での順位はショーン選手より上。
ということは…
3番手、ミン・ヒュンビン選手 from 韓国。


前ラウンド同様、決勝でもぶれない強い動きで観客を魅了します。









全く危なげなく最上部に到達したミン選手。ここからとんでもない動きを見せます。









なんとクロスランジ(進行方向とは逆の手で飛びつく技)で終了ホールドをキャッチ。
通常のランジより難度が高いこのムーブ。
相当に余裕と自信がなければ選択しないでしょう。
下部からの疲労が徐々に蓄積された最上部でそれをやってのけるとは…。
恐るべしアジアの小さな巨人。
ちなみにこのムーブは、須崎の大きな巨人ことMAX〇浦がさっそく明日やってくれることと思います。
…あ、肩壊さないようにね。
ノルウェー、マグナス・ミトボ選手。


レストポイントで余裕っぷりをアピール。

そのアピール通り…

完登!!


オーストリア、マリオ・レクナー選手。


同国のヤコブ・シューベルト選手の陰に隠れてしまっている感があるマリオ選手。
しかし、彼もまたクライミング大国オーストリア選りすぐりのクライマー。



それを証明するかのごとく…


完登。

6番手。
安間佐千選手。
















































ホームでの大会。
続出する完登者。
年間優勝への王手。
そのプレッシャーは如何許りか。
ただただ、驚嘆するばかり。
さて、気を取り直して…
オーストリア、ヤコブ・シューベルト選手。

ライバルの完登に何を思う。







もはや落ちるイメージが場内の熱気にかき消されている感があります。
おそらく次の選手も落ちることはないでしょう。
そして、次の選手は最後の一人。
5年ぶりに日本で行われたリードクライミングのワールドカップ。
この印西大会のトリはこの男。

ラモン・ジュリアン・プッチブランカ


















完登者、実に7名。
男子決勝に起こったちょっとした(?)ミラクルを最後に印西大会の全競技は終了。

壁がまた少し表情を変えていきます。

表彰式です。
まず女子。

3位。マヤ・ビドマー選手。ベテランの意地を見せました。

2位。キム・ジャイン選手。小柄な体から繰り出すムーブは強く美しい。

そして1位。ミナ・マルコビッチ選手。準決勝7位から奇跡の逆転!! 勝負強さを見せつけました。


続いて男子。

3位。安間佐千選手。数々のプレッシャーと闘いながら堂々の表彰台!!

2位。ヤコブ・シューベルト選手。今回は安間選手に競り勝ちました!! 来年も楽しみです。

そして1位。ラモン・ジュリアン・プッチブランカ選手。無限の持久力ここに極まれり!!


退席時、自分たちを見ている子供たちに気付くヤコブ。

ささと子供たちに花を渡す彼。とっさのことでカメラブレる、子ども入ってないw

閉会です。
IFSC会長、マルコ・スコラリス氏が閉会を宣言、ワールドカップ印西大会は無事幕を閉じました。

終わりました。
何かもう別世界でしたね。
クライミングっていろいろなジャンルがあるので、それが故に誤解されやすいところもあると思うのですが、いろいろなジャンルあれど、総じて『冒険的要素』が強い遊びだと思います。それは、一般に『危険』と置き換えられることもあるかとは思いますが。
今回のワールドカップに代表される競技としてのクライミングは、可能な限りその冒険的要素(危険)は排除して、その上で肉体の限界に挑むという位置づけ。
それは、つまり野球やサッカーのようなスポーツとほぼ同じ線上にあるものと言えるでしょう。
現在、オリンピック競技の有力候補として挙がっていることも、それを端的に示していると思います。
それによる弊害もあるでしょうが、それなりに認知され底辺が広がるということは喜ばしいこと。
事実、今回の大会を見たことをきっかけにクライミングを始める人も出てくるでしょう。
『クライミングってかっこいい』っていう動機でとりあえずは十分かと。
実際、世界のトップの登りは、ありえないほどかっこよかったですから。
あと、クライミングを『観る』という楽しさも改めて実感できました。
『エンターテイメントとしてのクライミング』というジャンルが日本でも確立されつつあるということ。
もちろんそれは出場選手、そして演出側の質に左右されるものでもあるとは思いますが…。
それらさえ満たせば、多少の対価を払ってでも観に行く魅力がクライミングにはあると思います。
こういった、いろいろな意味での最先端を見ることができたのは、非常に収穫でした。
…と、少しだけ回りくどく小難しいことを考えてしまいましたが、とにかく楽しめました。
ところで、話は現在に戻ってしまいますが、安間佐千選手。
先日スロベニアで行われたワールドカップ最終戦、クラニ大会にて2位入賞。
総合ポイントで他選手を引き離し、悲願であったワールドチャンピオンとなりました。
リードクライミングのワールドチャンピオンは、かの平山ユージ氏以来の快挙。
その後もスペインはシウラナの岩場にて、極難ルート、ラ・ランブラ(5.15a)を完登するなど、絶好調な様子。
平山ユージ氏がワールドチャンピオンになったのが、1998年、2000年の2回。
そこからほぼ10年後、チャンピオンとなった安間佐千。
国内での盛り上がり様を見ると、彼に続くクライマーが現れるのはそう遠くない日なのかもしれませんね。
さて、次の国内開催はいつになるでしょう。
やるんだったら次回は名古屋か大阪あたりにしてほしいですね。
しかし、キム・ジャインかわいかったな~。

おわり
席を離れ、会場外へと。
場外では、飲食や土産物の販売コーナーはもちろん、掘り出し物のアウトドア用品までが並んでいます。

また、アウトドアスポーツのちょっとした体験コーナーも設けられていました。
その中の一つ、スラックライン。

もともとはクライマーがロープを使って始めた綱渡りが、遊びの一つのジャンルとして確立したもの。
最近、着実に愛好者を増やし、今では世界大会も行われています。
そして、小さいながらもトップロープクライミングが体験できるウォールまで設置されていました。

来年の東京国体のマスコット『ゆりーと』も一足先にお目見え。

そろそろ中に戻ります。
今大会のメインスポンサーは、ご存知『MAMMUT』と新潟の酒造メーカーの雄『八海山』。

会場後方には専用ブースが設けられ、こちらも賑わっていました。
特にMAMMUTは、もともとクオリティの高い製品の叩き売りに近いセールだけあって大盛況。
さて、後方で賑わう観客を尻目に、ウォールではセッターたちの手により決勝ルートが完成しようとしています。


セッターチームのメンバーのひとり、平松幸祐氏は、ルートセットだけでなく競技中のMCも担当。
非常にノリがよく、またクライミング未経験者にもわかりやすい解説を交えて、場を盛り上げていました。
そして、ルートを構成しているホールド群。
両カテゴリー、全ラウンドを通してですが、各メーカーの目玉ホールドがふんだんに使われています。
その中でもやっぱり個人的に気になったのは、9月の展示会でも見た『GOD HAND』。



このホールドのカタログを見たサスケが、数日間不眠症に陥ったというのはあくまでも噂です。
ちなみに…
「このルート1本でいくらなんやろう」
…というのは下衆の発想というものです…。
開始間近となりました。
再び場内は暗転、ウォールは表情を変え、観客を飲み込むようにそびえ立ちます。

振り返れば、場内は人、人。


決勝は女子より。入場後、まず選手紹介が行われます。

そして、オブザベーション開始。





女子決勝ルートは、ウォール右からスタートし、中間から左ウォールへと続いていくという、長大なルート。

15mというウォールは決して短いわけではありませんが、国際大会レベルではかなり平凡な部類に入ります。
そのため、こうやってウォールとウォールをつなげるようなルートにしたり、トラバース(横移動)を増やしたりして、登攀距離を稼ぐわけです。
ということは、次の男子ルートはどうなるか・・・というのは、推して知るべしです。
競技開始。
一番手、シャーロット・デュリフ選手 from フランス。

登りを見ると、あまりコンペ的な感じじゃないなと思ったのですが、決勝に残るあたりはさすが8Cオンサイター。

順調に各ポイントを通過し、見せ場ともいえるウォールとウォールの隙間に入っていきます。

足使ってしっかりレスト。

さぁ入った。

完全に移りこみ…

さらにトラバース。

ここから上部へ。

うまくキョン(片膝を落として安定させるムーブ)を決めてハリボテ帯へ。

左足のトゥフックがニクイ。

そしてクロス。しかし、そこからの切り返しでフォールしてしまいました。

二番手。ミナ・マルコビッチ選手 from スロベニア。

2011年年間チャンプという、本来ならもう少し順番が後でもおかしくない選手。

よどみないクライミングで…

難なく左ウォールへ。


狭い動きもしっかりこなして上へとつなげます。

ここからはまさにお手本となるようなムーブの連続。







来るっ。

キターッ!!!!

ガッツポーズ!!

後続の選手は、この歓声で先方の完登を悟ったことでしょう。
登場するその後続の選手は
野口啓代選手。

2009、2010年のボルダリングワールドカップチャンピオン。
今回の印西大会に合わせ、その本来の専門であるボルダリングからコンバート。

ボルダリングで培った、非常にしなやかで思い切りのいい動きでハング帯を登りこなしていきます。


そして、壁と壁の隙間へと。

ステミング(両足を開いて突っ張る体勢)ができ、傾斜も殺せるので、ここは絶好のレストポイントとなります。
そして…
絶好のスマイルポイントともなります。

さぁ、観客の歓声をエネルギーに替え、左壁に突入。


順調にトラバースもこなしていき…


じわじわとゴールまでの距離を縮めていきます。

シャーロットのトゥフックに対して、彼女はヒールフック。

そして膝を反転、カウンターバランスでハリボテの縁へと。

バランスを崩しかけましたが、よく耐えます。

立て直し、ヒールフックを使って

ぐいと乗り込み、手を伸ばします。

しかし、取った!!…と思った瞬間足が外れ…


…残念。しかし、そのパフォーマンス、そして絶やさない笑顔に惜しみない拍手が送られます。

ロシア、ディナラ・ファクリディノワ選手。

準決勝では抜群のパフォーマンスを見せ、場内を沸かせた彼女。決勝では如何に。

国別で見ると、体の強さが目立つロシア。彼女も例にもれず、下部から安定した動きを見せます。


しかし、上部に差し掛かった辺りから少しずつ体勢を崩し始め…

結局、このクロスからの切り替えしでの体の振られに耐えられず、競技終了となりました。

日本人2人目。小田桃花選手。

オーストリア・イムストでワールドカップ初優勝を果たし、今年大ブレイクした彼女。
その勢いに乗れるか。





もちろんここではしっかりレスト。

上部直下も落ち着いて。

ハリボテの縁を取った瞬間、足が切れてしまいますが、なんとかリカバー。

他の選手と違い、右に乗り込み、手を伸ばすが…

惜しくも…

from オーストリア、ヨハンナ・エルンスト選手。

正確無比な登りで常に上位にランクしている彼女。



小田選手同様、彼女も右を…

しかし、これも同様に外してしまいます。

スロベニア、マヤ・ビドマー選手。

2007年、ワールドカップ加須大会優勝者。
あれから5年。若手ひしめく中、アスリートとしてはもうベテランの域と言っていいでしょう。
予選、準決勝では、その円熟味ある登りで完登劇を見せてくれましたが、フルマークはなるか?







いいテンポで最上部をうかがいます。

しかし残念、この直後に力尽きてしまいます。

さぁ女子、残すところあと一人、
キム・ジャイン選手。

ミナ選手が完登していますが、キム選手も完登すれば、カウントバックで彼女の優勝が決まります。
言い換えれば、完登する以外に彼女の優勝はないということでもあります。





力強く

柔らかい。


後半部へ。




あと一手!!

取った!?







残念!! 完登ならず。
しかし、魅せてくれました。

間にセットをはさむので、男子決勝までは少し時間があります。
その隙にデジカメの充電をしに車へ。
会場に戻ると、いい頃合い。

女子同様、まずは選手紹介から。
我らが安間佐千選手は、6番手のスタートです。

オブザベーション開始。






男子決勝ルートは、女子とは逆。ウォール左からスタートし、右へと抜けていくルート。

さぁ両カテゴリー含めて、最終となるラウンド。



開始です。
一番手、フランス、ロマン・デグランジェ選手。


男子フランスチームで唯一の決勝進出を果たしたチームのエース。
エースの意地を見せられるか。


女子同様、この隙間はレストポイントとなります。

右に移ってからは、少しクライムダウンしていきます。


一番下まで下りたところで、ここもレストポイント。

そこからは上がるのみ。





驚くことにロマン選手、一番手ながら最上部まで到達してしまいます。そして…

この次の一手でフォール。

なんと終了点手前まで。
準決勝で書いたように、競技順は前のラウンドで成績が悪かった選手から。
ロマン選手のパフォーマンスが神掛かっていたのか・・・それとも・・・。
2番手、ショーン・マッコール選手 from カナダ。



















当然のように最上部に到達し…

そして当然のように…





かなり余裕をもって完登したように見えました。
ショーン選手は、今シーズン参戦している大会では常に決勝に進出。
前々回の中国大会では優勝もしています。
しかし、後に控えている選手たちも非常な強者ぞろい。
しかも準決勝の時点での順位はショーン選手より上。
ということは…
3番手、ミン・ヒュンビン選手 from 韓国。


前ラウンド同様、決勝でもぶれない強い動きで観客を魅了します。









全く危なげなく最上部に到達したミン選手。ここからとんでもない動きを見せます。









なんとクロスランジ(進行方向とは逆の手で飛びつく技)で終了ホールドをキャッチ。
通常のランジより難度が高いこのムーブ。
相当に余裕と自信がなければ選択しないでしょう。
下部からの疲労が徐々に蓄積された最上部でそれをやってのけるとは…。
恐るべしアジアの小さな巨人。
ちなみにこのムーブは、須崎の大きな巨人ことMAX〇浦がさっそく明日やってくれることと思います。
…あ、肩壊さないようにね。
ノルウェー、マグナス・ミトボ選手。


レストポイントで余裕っぷりをアピール。

そのアピール通り…

完登!!


オーストリア、マリオ・レクナー選手。


同国のヤコブ・シューベルト選手の陰に隠れてしまっている感があるマリオ選手。
しかし、彼もまたクライミング大国オーストリア選りすぐりのクライマー。



それを証明するかのごとく…


完登。

6番手。
安間佐千選手。
















































ホームでの大会。
続出する完登者。
年間優勝への王手。
そのプレッシャーは如何許りか。
ただただ、驚嘆するばかり。
さて、気を取り直して…
オーストリア、ヤコブ・シューベルト選手。

ライバルの完登に何を思う。







もはや落ちるイメージが場内の熱気にかき消されている感があります。
おそらく次の選手も落ちることはないでしょう。
そして、次の選手は最後の一人。
5年ぶりに日本で行われたリードクライミングのワールドカップ。
この印西大会のトリはこの男。

ラモン・ジュリアン・プッチブランカ


















完登者、実に7名。
男子決勝に起こったちょっとした(?)ミラクルを最後に印西大会の全競技は終了。

壁がまた少し表情を変えていきます。

表彰式です。
まず女子。

3位。マヤ・ビドマー選手。ベテランの意地を見せました。

2位。キム・ジャイン選手。小柄な体から繰り出すムーブは強く美しい。

そして1位。ミナ・マルコビッチ選手。準決勝7位から奇跡の逆転!! 勝負強さを見せつけました。


続いて男子。

3位。安間佐千選手。数々のプレッシャーと闘いながら堂々の表彰台!!

2位。ヤコブ・シューベルト選手。今回は安間選手に競り勝ちました!! 来年も楽しみです。

そして1位。ラモン・ジュリアン・プッチブランカ選手。無限の持久力ここに極まれり!!


退席時、自分たちを見ている子供たちに気付くヤコブ。

ささと子供たちに花を渡す彼。とっさのことでカメラブレる、子ども入ってないw

閉会です。
IFSC会長、マルコ・スコラリス氏が閉会を宣言、ワールドカップ印西大会は無事幕を閉じました。

終わりました。
何かもう別世界でしたね。
クライミングっていろいろなジャンルがあるので、それが故に誤解されやすいところもあると思うのですが、いろいろなジャンルあれど、総じて『冒険的要素』が強い遊びだと思います。それは、一般に『危険』と置き換えられることもあるかとは思いますが。
今回のワールドカップに代表される競技としてのクライミングは、可能な限りその冒険的要素(危険)は排除して、その上で肉体の限界に挑むという位置づけ。
それは、つまり野球やサッカーのようなスポーツとほぼ同じ線上にあるものと言えるでしょう。
現在、オリンピック競技の有力候補として挙がっていることも、それを端的に示していると思います。
それによる弊害もあるでしょうが、それなりに認知され底辺が広がるということは喜ばしいこと。
事実、今回の大会を見たことをきっかけにクライミングを始める人も出てくるでしょう。
『クライミングってかっこいい』っていう動機でとりあえずは十分かと。
実際、世界のトップの登りは、ありえないほどかっこよかったですから。
あと、クライミングを『観る』という楽しさも改めて実感できました。
『エンターテイメントとしてのクライミング』というジャンルが日本でも確立されつつあるということ。
もちろんそれは出場選手、そして演出側の質に左右されるものでもあるとは思いますが…。
それらさえ満たせば、多少の対価を払ってでも観に行く魅力がクライミングにはあると思います。
こういった、いろいろな意味での最先端を見ることができたのは、非常に収穫でした。
…と、少しだけ回りくどく小難しいことを考えてしまいましたが、とにかく楽しめました。
ところで、話は現在に戻ってしまいますが、安間佐千選手。
先日スロベニアで行われたワールドカップ最終戦、クラニ大会にて2位入賞。
総合ポイントで他選手を引き離し、悲願であったワールドチャンピオンとなりました。
リードクライミングのワールドチャンピオンは、かの平山ユージ氏以来の快挙。
その後もスペインはシウラナの岩場にて、極難ルート、ラ・ランブラ(5.15a)を完登するなど、絶好調な様子。
平山ユージ氏がワールドチャンピオンになったのが、1998年、2000年の2回。
そこからほぼ10年後、チャンピオンとなった安間佐千。
国内での盛り上がり様を見ると、彼に続くクライマーが現れるのはそう遠くない日なのかもしれませんね。
さて、次の国内開催はいつになるでしょう。
やるんだったら次回は名古屋か大阪あたりにしてほしいですね。
しかし、キム・ジャインかわいかったな~。

おわり
Day3-Ⅰ
明日は9時開場。
8時には行っとくかな。(11月3日のentryより)
甘かったです。
それなりに認知されるようになったとはいえ、国内ではまだマイナーの域を脱していないスポーツ。
が…
やはりワールドカップです。
8時前。

それでも30分ほどしたら後方にさらに長蛇の列ができており、まだマシだったんだなと実感。
『MAMMUT』の巨大マスコットが選手、観客を出迎えます。

闘いを前にくつろぐフランスチーム。

予定より少し遅れたものの、9時すぎ開場。
足早に館内へ。なんとか前から3列目をゲット!!

ライティングのせいか、昨日よりも威圧感を増しているウォール。

その基部ではスタッフたちが打ち合わせ。

さて、準決勝からは、予選のフラッシング方式と違い、オンサイト方式というものが採用されます。
トライが1回のみという点は同じですが、オンサイト方式では、他人の登りを見ることは許されません。
オブザベーションは、開始前に選手一斉にその時間が与えられます。
オブザベーションが終わると、選手はアイソレーションエリアへ移動し、文字通り隔離状態となります。
自分の順番が来るまでは、会場へと入ることはできません。
この方式、フラッシング方式に比べると運営、進行に手間がかかり、時間が押してしまうことも多々あるのですが、選手が各々、一からクライミングを組み立てていくという意味で、真の力が問われる方式と言えます。
さぁ、そのオブザベーションが男女一斉に始まりました。制限時間は6分です。
右は男子ルート。

左が女子ルートです。


上部の見えづらい箇所は双眼鏡を使い

実際に手を動かして手順を追い、イメージするクライミングを頭に焼き付けます。





オブザベーション終了。
選手にとっては、あっという間の時間です。
競技方式とともに予選とがらりと変わるのは、その演出。
場内は暗転し、壁がライトアップされます。

そして、DJチーム『JAZZY SPORT』の音楽がさらに場内を盛り上げる中、準決勝開始です。


女子一番手は、隣国台湾より単身参戦のリー・ハンィン選手。

競技は、前のラウンドで成績が悪かった選手から順番に行われるのですが、リー選手は安定したクライミングでスイスイ高度を稼いでいきます。
中間を越えたハリボテからカチ取りのところで落ちましたが、なかなかの高度でした。

当然、ルートは予選よりも厳しく設定されており、次々と登場する選手たちを苦しめます。
渡辺数馬選手

イタリア、ステファノ・ジソルフィ選手。上の黄色の巨大ホールドまで到達するも次で力尽きてしまいます。

2010年ジュニアオリンピックチャンピオン、竹内彩佳選手。


Atrixこと安田あとり選手


韓国、キム・ジャビー選手。


小林由佳選手。

今大会、あまり調子が良くないようです。上部間近まで迫るも途中足が外れてしまい、そのままフォール。

男子。なかなか上部をうかがえる選手が出ない中、松島暁人選手登場。

多くの選手を振るい落とした箇所を越え、2つの球体ハリボテへと手を伸ばします。

そしてそのハリボテにヒールフックしてさらなる上部へと。

カンテ(壁側面)のホールドにトゥフックしながらクロスムーブ。

残念ながらここで力尽きてしまいましたが、抜群のパフォーマンスに会場は沸き立ちます。

世界が注目するユース、是永敬一郎選手。今年のジュニアオリンピックチャンピオンです。


大人顔負けの健闘に惜しみない拍手が送られます。

榊原祐子選手。絶やさない笑顔は、かつてのフランスのトップクライマー、リブ・サンゾを思わせます。


オランダのイケメンクライマー、ヨルグ・ヴェルホーヴェン選手。2008年ワールドチャンピオンです。

ハリボテにダブルヒールという離れ技!!

松島選手とは少し違ったクロスムーブで突破を試みるも同高度となりました。

尾上彩選手。

ユースながら大人の大会での優勝経験もある彼女。

完登こそなりませんでしたが、堅実な登りできっちりと高度を稼ぎました。

太田理裟選手。

今年のジュニアオリンピックチャンピオン。上位が期待されます。左はフランス、ドメン・スコフィック選手。

上部のピンクホールド直下まで達し、その時点での日本人最高到達点をマーク。

アジアの小さな巨人、韓国、ミン・ヒュンビン選手。

足が切れてもがっちりとスィングコントロール。

クロスムーブも上手くこなし、緑ハリボテに。

ハリボテ下のアンダーホールドもしっかりキャッチし、そのままその時点での最高到達点をマークします。

ルックスはまさにフランス人形。エレネ・ジャニコ選手。

上部直下で足ブラになるもうまく立て直し、上部へと迫ります。

ハリボテ付近で惜しくもフォール。

同じくフランス、シャーロット・デュリフ選手。絶妙のレスティング。

向こう数日は、N々下きんに君がこのムーブをジムでひたすらトレースしてくれると思いますw
女子で一気に沸かせてくれたのが、ロシア、ディナラ・ファクリディノワ選手。

今まで誰もたどり着けなかった上部ハリボテ帯を越え…

そのまま完登…と思われたが…

なんと最終ホールドを掴み切れずフォール!!

俄然、後続の選手の完登に期待がかかります。
そんな中登場したオーストリアの女帝、ヨハンナ・エルンスト選手。

シャーロット同様、巧みなレスティング。長いルートでは要所要所でのレストが成否を分けます。

上部ハリボテでも余裕を持ってレストし…

ディナラ選手が取り損ねた最終ホールドもしっかりキャッチ。

完登!!

とどろく歓声が、待機する後続の選手にプレッシャーをかけていきます。
スロベニア、ミナ・マルコビッチ選手。

予選同様、安定感のある登りで上部をうかがいますが

ここでフォール!!

タカヒサ・ロスコットの心の師、ノルウェー、マグナス・ミトボ選手。



Got it!!

オーストリア、ヤコブ・シューベルト選手。完登してライバルの安間選手にプレッシャーを与えられるか。

若いとはいえもはや大御所。しっかりとレスト。

そしてハリボテも越え

終了ホールド手前の黄色ホールドを保持。

そこでフォールし完登は逃しましたが、ミン、そしてマグナス選手の高度を越えます。

カナダ、ショーン・マッコール選手。ヒール&トゥで巧みなレスティング。

狙うは最後の緑ホールド。

しかし、ハリボテからのアンダー寄せで吹っ飛んでしまいます。

このハリボテのアンダーホールドへの寄せ、かなり悪いことがうかがえます。
上部に到達した選手の多くが苦戦しています。
そして女子はこの人。
来ました、野口啓代選手。


長い手足を生かし、どんどん高度を上げていきます。

ピンクホールドでしっかりレストしたのち

突入していきます。

しかし、
ハリボテ直下のホールドがとりきれず、そこで足を外してフォール。

クライマックスに差し掛かりつつあります。スロベニア、マヤ・ビドマー選手。

それとほぼ時を同じくして登場、ラモン・ジュリアン・プッチブランカ選手 from スペイン。

ハング入口のハリボテ帯。身長のある選手でも足がきれてしまう中、非常に安定して越えていきます。

ほぼ同高度の2人。

ラモン選手。もはや落ちるわけがないという空気の中、多くの選手を退けたホールドも手中にし

そしてそこから右足を上げ、基本のカウンターバランス。

キター!!

…強すぎる。

そしてマヤ選手。最後のハリボテも越え

膝を落として安定させ、終了点手前のホールドへ

これも取った!!

そのまま吸い込まれるように…

完登。

予選と違ってうれしそうな表情が。

両者完登により高まった熱気に押されるようにして、日の丸を背負った二人の選手が登場します。
男子。安間佐千選手。

女子。小田桃花選手。

両選手とも準決勝を1位で終えるためには完登しかありません。
小田桃花選手。


安間佐千選手。









あっという間に上部に到達。

二人ともレスト体勢、

のち突入。

まず安間佐千選手。ハリボテキャッチ。

そこからアンダーホールドをとり

体を切り返す。

とった!!

もう一丁!!

が、惜しくも…

そして小田桃花選手。野口選手が到達できなかった最後のハリボテ帯に到達。落ち着いてレスト。

目指すは完登のみ。

しっかり右足で乗り込み…


終了点キャッチ!!

しかし、無情にも…

二人とも完登はならず。
男子は安間佐千選手を最後に競技終了し、残すは女子のあの選手ひとりのみ。
そう。
韓国、キム・ジャイン選手。

同じ韓国のミン・ヒュンビン選手同様、非常に体が強い。しっかりとコントロールし

振り子のように



方向転換。

上部のピンクホールドでレスト。柔軟性も相当なものです。

そしてさらなる高みを目指します。

ハリボテのキャッチの瞬間に足が離れてしまいますが、肩を入れてしっかり耐えます。

そして誰よりも安定して…

終了ホールドへ。先の完登者のように足が離れません。

決めてくれました!!


まるで彼女のために整えられたような舞台。
その舞台での完璧かつ美麗な演武を堪能できました。
これで準決勝は終了。
男女、リザルトは以下のようになりました。


右から二番目の項目『Height』が成績の基準となる到達高度です。
到達高度は数字で表されます。完登は『TOP』。
数字の隣の『+』は、そのホールドを保持し、次のホールドに対して有効な動きができた場合、加算されます。
同じ数字なら当然『+』の方が成績は上となります。
同じ高度なのに順位が違っていたりするのは、同じ高度の場合は前ラウンドの成績が加味されるからです。
言わずもがな決勝進出者は、太線より上の上位8名です。
さて、ここから昼休憩をはさみます。
観てシャッターを押して叫んでただけなのに腹が減った…。
お昼を買いに行こうと席を立とうとしたとき、ふと目に入ったものがありました。

しゃがみ込んで何かに見入っている野口選手の姿。
傍らにいるのはお父さんでしょうか。
おそらくは先ほどの自分や他の選手のクライミングの映像。
準決勝の登りに納得いかないものもあったのかもしれません。
競技中に観客に見せていた笑顔とは対照的に、真剣に見入っている後ろ姿が非常に印象に残りました。
つづく
8時には行っとくかな。(11月3日のentryより)
甘かったです。
それなりに認知されるようになったとはいえ、国内ではまだマイナーの域を脱していないスポーツ。
が…
やはりワールドカップです。
8時前。

それでも30分ほどしたら後方にさらに長蛇の列ができており、まだマシだったんだなと実感。
『MAMMUT』の巨大マスコットが選手、観客を出迎えます。

闘いを前にくつろぐフランスチーム。

予定より少し遅れたものの、9時すぎ開場。
足早に館内へ。なんとか前から3列目をゲット!!

ライティングのせいか、昨日よりも威圧感を増しているウォール。

その基部ではスタッフたちが打ち合わせ。

さて、準決勝からは、予選のフラッシング方式と違い、オンサイト方式というものが採用されます。
トライが1回のみという点は同じですが、オンサイト方式では、他人の登りを見ることは許されません。
オブザベーションは、開始前に選手一斉にその時間が与えられます。
オブザベーションが終わると、選手はアイソレーションエリアへ移動し、文字通り隔離状態となります。
自分の順番が来るまでは、会場へと入ることはできません。
この方式、フラッシング方式に比べると運営、進行に手間がかかり、時間が押してしまうことも多々あるのですが、選手が各々、一からクライミングを組み立てていくという意味で、真の力が問われる方式と言えます。
さぁ、そのオブザベーションが男女一斉に始まりました。制限時間は6分です。
右は男子ルート。

左が女子ルートです。


上部の見えづらい箇所は双眼鏡を使い

実際に手を動かして手順を追い、イメージするクライミングを頭に焼き付けます。





オブザベーション終了。
選手にとっては、あっという間の時間です。
競技方式とともに予選とがらりと変わるのは、その演出。
場内は暗転し、壁がライトアップされます。

そして、DJチーム『JAZZY SPORT』の音楽がさらに場内を盛り上げる中、準決勝開始です。


女子一番手は、隣国台湾より単身参戦のリー・ハンィン選手。

競技は、前のラウンドで成績が悪かった選手から順番に行われるのですが、リー選手は安定したクライミングでスイスイ高度を稼いでいきます。
中間を越えたハリボテからカチ取りのところで落ちましたが、なかなかの高度でした。

当然、ルートは予選よりも厳しく設定されており、次々と登場する選手たちを苦しめます。
渡辺数馬選手

イタリア、ステファノ・ジソルフィ選手。上の黄色の巨大ホールドまで到達するも次で力尽きてしまいます。

2010年ジュニアオリンピックチャンピオン、竹内彩佳選手。


Atrixこと安田あとり選手


韓国、キム・ジャビー選手。


小林由佳選手。

今大会、あまり調子が良くないようです。上部間近まで迫るも途中足が外れてしまい、そのままフォール。

男子。なかなか上部をうかがえる選手が出ない中、松島暁人選手登場。

多くの選手を振るい落とした箇所を越え、2つの球体ハリボテへと手を伸ばします。

そしてそのハリボテにヒールフックしてさらなる上部へと。

カンテ(壁側面)のホールドにトゥフックしながらクロスムーブ。

残念ながらここで力尽きてしまいましたが、抜群のパフォーマンスに会場は沸き立ちます。

世界が注目するユース、是永敬一郎選手。今年のジュニアオリンピックチャンピオンです。


大人顔負けの健闘に惜しみない拍手が送られます。

榊原祐子選手。絶やさない笑顔は、かつてのフランスのトップクライマー、リブ・サンゾを思わせます。


オランダのイケメンクライマー、ヨルグ・ヴェルホーヴェン選手。2008年ワールドチャンピオンです。

ハリボテにダブルヒールという離れ技!!

松島選手とは少し違ったクロスムーブで突破を試みるも同高度となりました。

尾上彩選手。

ユースながら大人の大会での優勝経験もある彼女。

完登こそなりませんでしたが、堅実な登りできっちりと高度を稼ぎました。

太田理裟選手。

今年のジュニアオリンピックチャンピオン。上位が期待されます。左はフランス、ドメン・スコフィック選手。

上部のピンクホールド直下まで達し、その時点での日本人最高到達点をマーク。

アジアの小さな巨人、韓国、ミン・ヒュンビン選手。

足が切れてもがっちりとスィングコントロール。

クロスムーブも上手くこなし、緑ハリボテに。

ハリボテ下のアンダーホールドもしっかりキャッチし、そのままその時点での最高到達点をマークします。

ルックスはまさにフランス人形。エレネ・ジャニコ選手。

上部直下で足ブラになるもうまく立て直し、上部へと迫ります。

ハリボテ付近で惜しくもフォール。

同じくフランス、シャーロット・デュリフ選手。絶妙のレスティング。

向こう数日は、N々下きんに君がこのムーブをジムでひたすらトレースしてくれると思いますw
女子で一気に沸かせてくれたのが、ロシア、ディナラ・ファクリディノワ選手。

今まで誰もたどり着けなかった上部ハリボテ帯を越え…

そのまま完登…と思われたが…

なんと最終ホールドを掴み切れずフォール!!

俄然、後続の選手の完登に期待がかかります。
そんな中登場したオーストリアの女帝、ヨハンナ・エルンスト選手。

シャーロット同様、巧みなレスティング。長いルートでは要所要所でのレストが成否を分けます。

上部ハリボテでも余裕を持ってレストし…

ディナラ選手が取り損ねた最終ホールドもしっかりキャッチ。

完登!!

とどろく歓声が、待機する後続の選手にプレッシャーをかけていきます。
スロベニア、ミナ・マルコビッチ選手。

予選同様、安定感のある登りで上部をうかがいますが

ここでフォール!!

タカヒサ・ロスコットの心の師、ノルウェー、マグナス・ミトボ選手。



Got it!!

オーストリア、ヤコブ・シューベルト選手。完登してライバルの安間選手にプレッシャーを与えられるか。

若いとはいえもはや大御所。しっかりとレスト。

そしてハリボテも越え

終了ホールド手前の黄色ホールドを保持。

そこでフォールし完登は逃しましたが、ミン、そしてマグナス選手の高度を越えます。

カナダ、ショーン・マッコール選手。ヒール&トゥで巧みなレスティング。

狙うは最後の緑ホールド。

しかし、ハリボテからのアンダー寄せで吹っ飛んでしまいます。

このハリボテのアンダーホールドへの寄せ、かなり悪いことがうかがえます。
上部に到達した選手の多くが苦戦しています。
そして女子はこの人。
来ました、野口啓代選手。


長い手足を生かし、どんどん高度を上げていきます。

ピンクホールドでしっかりレストしたのち

突入していきます。

しかし、
ハリボテ直下のホールドがとりきれず、そこで足を外してフォール。

クライマックスに差し掛かりつつあります。スロベニア、マヤ・ビドマー選手。

それとほぼ時を同じくして登場、ラモン・ジュリアン・プッチブランカ選手 from スペイン。

ハング入口のハリボテ帯。身長のある選手でも足がきれてしまう中、非常に安定して越えていきます。

ほぼ同高度の2人。

ラモン選手。もはや落ちるわけがないという空気の中、多くの選手を退けたホールドも手中にし

そしてそこから右足を上げ、基本のカウンターバランス。

キター!!

…強すぎる。

そしてマヤ選手。最後のハリボテも越え

膝を落として安定させ、終了点手前のホールドへ

これも取った!!

そのまま吸い込まれるように…

完登。

予選と違ってうれしそうな表情が。

両者完登により高まった熱気に押されるようにして、日の丸を背負った二人の選手が登場します。
男子。安間佐千選手。

女子。小田桃花選手。

両選手とも準決勝を1位で終えるためには完登しかありません。
小田桃花選手。


安間佐千選手。









あっという間に上部に到達。

二人ともレスト体勢、

のち突入。

まず安間佐千選手。ハリボテキャッチ。

そこからアンダーホールドをとり

体を切り返す。

とった!!

もう一丁!!

が、惜しくも…

そして小田桃花選手。野口選手が到達できなかった最後のハリボテ帯に到達。落ち着いてレスト。

目指すは完登のみ。

しっかり右足で乗り込み…


終了点キャッチ!!

しかし、無情にも…

二人とも完登はならず。
男子は安間佐千選手を最後に競技終了し、残すは女子のあの選手ひとりのみ。
そう。
韓国、キム・ジャイン選手。

同じ韓国のミン・ヒュンビン選手同様、非常に体が強い。しっかりとコントロールし

振り子のように



方向転換。

上部のピンクホールドでレスト。柔軟性も相当なものです。

そしてさらなる高みを目指します。

ハリボテのキャッチの瞬間に足が離れてしまいますが、肩を入れてしっかり耐えます。

そして誰よりも安定して…

終了ホールドへ。先の完登者のように足が離れません。

決めてくれました!!


まるで彼女のために整えられたような舞台。
その舞台での完璧かつ美麗な演武を堪能できました。
これで準決勝は終了。
男女、リザルトは以下のようになりました。


右から二番目の項目『Height』が成績の基準となる到達高度です。
到達高度は数字で表されます。完登は『TOP』。
数字の隣の『+』は、そのホールドを保持し、次のホールドに対して有効な動きができた場合、加算されます。
同じ数字なら当然『+』の方が成績は上となります。
同じ高度なのに順位が違っていたりするのは、同じ高度の場合は前ラウンドの成績が加味されるからです。
言わずもがな決勝進出者は、太線より上の上位8名です。
さて、ここから昼休憩をはさみます。
観てシャッターを押して叫んでただけなのに腹が減った…。
お昼を買いに行こうと席を立とうとしたとき、ふと目に入ったものがありました。

しゃがみ込んで何かに見入っている野口選手の姿。
傍らにいるのはお父さんでしょうか。
おそらくは先ほどの自分や他の選手のクライミングの映像。
準決勝の登りに納得いかないものもあったのかもしれません。
競技中に観客に見せていた笑顔とは対照的に、真剣に見入っている後ろ姿が非常に印象に残りました。
つづく
Day2
さすがに千葉は観戦に行くには遠方すぎますが(10月25日のentryより)
でも岐阜からだったら結構近いんですね。
車を通して入る寒気を感じながら中央道を走り、うねりうねった首都高を抜け、無事0時過ぎに千葉到着。
そのまま一夜を明かし、郊外へ。
印西市松山下公園総合体育館。


館内奥に待ち受けるのは…

今大会の戦場となる15mのウォール。

左壁には千葉国体のマスコット『チーバくん』の姿も。もちろんこれもホールドです。

壁の基部に目を移すと、既にひとり黙々とルートのオブザベーションをする選手が。

現在ワールドカップランキング12位の小林由佳選手です。
10代のころから国内大会では負け知らずだった彼女も、もうコンペティターとしては円熟期。
今季も何戦か決勝進出しており、今大会でも上位が期待される選手です。
ちなみにオブザベーションというのは、ルートの観察(直訳どおりですが…)。
こういった大会では、基本的に1つのルートにつき1回しかトライするチャンスが与えられません。
そのため、最後まで落ちずに完登するためには、このオブザベーションでしっかりとルートの中での動きをイメージし、組み立てていくという作業が非常に重要になってくるわけです。
また今回、予選ではフラッシング方式というものが採用されています。
これは、トライは1回のみだが、他人の登りを見たりすることは許されるというもの。
選手は、事前に映像で自分たちが登るルートのデモクライミングを見せられており、この映像、また他の選手の登りを見て、自分のクライミングに備えます。
あと、判定の基準について。
よく『スピードを競うんですか?』と訊かれますが、さにあらず。
判定の基準は高度。つまりどれだけ高く登れたかです。
選手複数名が、予選、準決勝、決勝と全くの同高度であった場合、タイム、つまりスピードが判定基準となる場合がありますが、そういったケースは極めてまれです。
ただし、制限時間は存在します。
その時間内に登れなかった場合、タイムアウトになった時点での高度が成績となります。
制限時間は大会によってまちまちですが、だいたい6~8分が一般的です。
…というルールを踏まえた上で、会場へと戻ります。
ウォール左にはオーロラビジョンが設置され、選手の表情もよく見ることができます。

すべては整いました。
さぁ開始です。

右ルートは日本人選手一番手、遠藤由加選手。
クライミング歴20年以上の大ベテランです。
右ルートの最初の核心は、青のスローパー(丸っこい掴みどころのないホールド)から連続するカチ(薄っぺらくて細かいホールド)の処理。

多くの選手がこのパートの餌食となり、遠藤選手もここで力尽きてしまいました。
左ルート一番手、ロシアのマラミド・エフゲニア選手。

左ルートの核心の一つ。黄色い大きな鼻ホールドの処理。
マラミド選手はうまく足技を駆使して突破していきました。
ロシアは今回男女とも数名が参戦していますが、全体的に体が強い。体操選手を思わせる大きくてもブレない動きを繰り出してきます。
右ルート、太田理裟選手。最初の核心をうまく突破。上部ハング帯に突入していきます。

ロングリーチを生かし、ぐいぐい高度を稼ぎます。

右ルートで一番印象的なムーブ。体を反転させ、足を先に上部へと送ります。

ここもうまく突破し、終了点近くまでたどり着きましたが、惜しくもフォール。

左ルート、スロベニアのミナ・マルコビッチ選手。2011年の年間チャンピオンです。

抜群の安定感で高度を上げていきますが、この終了点間近で痛恨のフォール。

これまた有力選手登場。韓国、キム・ジャイン選手。

先週行われたワールドカップ韓国大会では優勝している彼女。こちらも安定感ハンパないです。

ウォームアップするかのように、最後まで危なげなく完登。格の違いを見せつけます。

左、スロベニアのマヤ・ビドマー選手。右、小田桃花選手。

マヤ・ビドマー選手は、5年前に埼玉で行われたワールドカップ加須大会の優勝者。
スロベニアは国こそ小さいものの、岩場は豊富にあり、歴史的にも強いクライマーを輩出してきています。
ちなみに今年のワールカップ最終戦は、スロベニアのクラニで行われます。
ユースでは負け知らずだった小田桃花選手。
近年大人の大会でも頭角を現し始め、今年のワールドカップ in イムストでは日本人女性としては初の優勝。
9月の世界選手権でも4位と現在若手注目度No.1の選手です。
その小田選手、あれよあれよといううちに最上部到達。

そのまま完登!!

うれしそう。

左ルート、マヤ・ビドマー選手も完登。こちらは小田選手とは対照的にクールです。

フランスより参戦。シャーロット・デュリフ選手。

岩場では女性初のグレード8C(5.14b)のオンサイト(初見一発で登りきること)にも成功している非常に強いクライマーです(DVD『THE FANATIC SEARCH 2』収録)。
しかし、軽々と抜群のうまさで登っていくもタイムオーバーになってしまい、右ルート完登はならず。
フランスは、今大会では彼女の他にも男女4名が参戦。
過去数年ではスペイン、オーストリア勢に押され気味な感がありましたが、近年、選手が上位にもくいこんできており、クライミング大国フランスの復権がうかがえます。
fromオーストリア、ヨハンナ・エルンスト選手。

DVD『PROGRESSION』であどけない表情を見せていた彼女ももう二十歳(まだ?)。
ここ十年ほどで台頭してきた新興クライミング大国、オーストリアのトップクライマー。
精密機械のような無駄のない動きで各パートをこなしていきます。
そしてついに登場!!

情熱大陸でもおなじみ、野口啓代選手。
現在の彼女の専門はボルダリングですが、今回の印西大会に合わせ、リードにも力を入れてきたよう。
今、その成果が問われます。
軽やかにステップを踏むかのように登りこなし


レストポイントではしっかりサービスという余裕っぷり。

完登~!! ブレた~。

さすがに沸かせてくれます。

そして小田選手、左ルートも完登!! これでパーフェクト。

マヤ、ジャインもそれに続きます。相変わらずクールなマヤ。


左ルート完登を逃したミナも右は難なく完登。

負けじと2本目の右ルート完登にも期待がかかる野口選手。

上部の動き。まずクロスムーブで右手をとり

足をほどき

オレンジホールドに狙いを定め


ポン

クル。

そして、絶妙な足技を駆使しながら上部をうかがい…


完登!!

野口選手の完登で盛り上がりが最高潮に達したところで女子予選は終了。
男子予選のルートセットに入ります。

ワールドカップのような国際大会には、専門資格を持ったセッターがルートセットを行います。
セッターは複数名から構成されますが、セッターのリーダーことチーフルートセッターは、必ず開催国以外の国から招聘されることになっています。
当然ながら、このルートセッターたち無くして大会は成立しえません。
華やかなコンペの舞台は、彼ら、ジャッジはじめ裏方の腐心と奮闘の上に成り立っているのです。
男子ルート完成。

進行をスムーズに行うため、一部女子ルートとホールドが共有されています。
さぁ男子予選開始です。
一番手は誰かな~・・・・・・って、え?

えええええええええ~!!!!

いきなりこの男かい。
スペインのラモン・ジュリアン・プッチU原ブランカが一番手で登場です。

クライミングは身長がある方が有利と思われている方は、ラモン選手を見て驚愕することでしょう。
なぜなら彼の身長、159㎝です。
遠いホールドをとるという点において、身長が高いことが有利に働くことは事実です。
しかし、低い人間でも体を一直線の棒のようにブレることなくコントロールできる強靭な体幹があれば、その弱点を克服することは可能です。もちろん簡単なことではありませんが…。
そして、視点を替えれば身長が低いことは逆に有利にも働きます。
身長が低いということは、相対的に体が軽いということ。
クライミングはパワーウェイトレシオが重要ですから、軽ければより重力の影響を受けずに登れるということになります。
事実、ラモン選手の動きにはとにかくブレがない。
身長のある選手が足が離れてしまうような局面でも彼の足は離れていないこともしばしば。
そして、『無限』とも称される高い持久力。
長く傾斜のあるルートとなれば、無類の強さを発揮します。
パチ・ウソビアガ、エデュー・マリン、上位常連だったスペイン選手が姿を消していく中、31歳という、アスリートとしては決して若いとは言えない年齢にもかかわらず上位に居続ける男。
個人的に一番応援したい選手です。
…なんてことを書いているうちにスイスイ高度を上げるラモン選手。


終始危なげなく終了ホールドへ。

当然完登。アップにもなっていない?

設定したルートが簡単すぎるのでは?…というほどの登りでしたが、後に登場する選手の多くは苦戦。
樽崎智亜選手

小澤信太選手


ラモン選手のパフォーマンスがいかにすごかったかがうかがい知れるというものです。
そんな中登場した、単身カナダから参戦の選手。
サスケの心の師、トレーニングマニアことショーン・マッコール選手。

某映像投稿サイトでは、このショーン選手の超絶トレーニング映像を見ることができます。
ダウンロード禁止法をはき違えたサスケが、直前に慌ててその映像を永久保存したというのはあくまで噂です。
そのショーン選手。今までの沈黙を破るかのように右ルート完登。

カッコええ。

そして、安間佐千選手のライバル、オーストリア、ヤコブ・シューベルト。

やはり完登。さすが2011年ワールドチャンプ。

さぁ、そのライバルの完登を横目に発進。

安間佐千選手。

ホームであるという地の利はありますが、その分プレッシャーも相当のものだと思います。ガンバ!!

左ルート、上部核心部に差し掛かっていきますが、

余裕でクリア。

多くの選手が取り損ねたハリボテ上のホールドも取り

そして終了点直下で余裕のレスト。

完登!!

ちょっとホッとしたような表情。

ラモン選手、2本目。そして、右はショーン選手と並ぶトレーニングマニア、マグナス・ミトボ選手。

ノルウェーから単身参加のマグナス選手。今季はコンスタントに好成績を収めており、やはり当然の完登。

…で、お隣も。

ロシア人選手2人の共演。左はイワン・カウロフ選手、右はミハイル・チェルニコフ選手。

ラモン選手の陰に隠れてしまいましたが、ミハイル選手は左ルート一番手で登場し、見事完登しています。
オーストリア、マリオ・レクナー選手。左ルート完登。

日本人選手も健闘が目立ちます。ハリーこと芝田将基選手。

非常に高いポテンシャルを持つことで知られる芝田選手。完登は逃すものの、ルート最上部まで迫ります。

インパクトのある赤髪で登場した沼尻拓磨選手。

女子ルートでも使われていたこの青と黄のハリボテですが、女子のそれと違うのは、右端のピンク以外は全くホールドが付いていないということ。
つまりハリボテそのものをホールドとして使わなければならないということです。
こういった箇所では、高い全身の協調性が要求されます。
単純に指が強いとか、足置きがうまいとかでは切り抜けられない局面です。
そこをうまく越え、沼尻選手、巧みなレスティング。

観客にアピールして沸かせる藤井快選手。

そして、その藤井選手の隣、左ルートにヤコブ。

完登。

不敵。

国体では、そのひょうきんなキャラでつねに観客を沸かせてくれる尾形和俊選手。

ちょいちょい振り向いてアピールw

フランス、マニュエル・ロマン選手。完登。

右ルート、松島暁人選手。ボルダリングのワールドカップでは、表彰台にも立っています。

左ルートではテンポよく高度を稼ぐも不意落ちしてしまった松島選手ですが、右ルートでは持ち前のスピーディーで胸のすくような登りを展開。
あっという間に上部到達。

完登か…と思われたが終了点間際でフォール。

韓国、ミン・ヒュンビン選手。

キム・ジャイン選手同様、先週のワールドカップ韓国大会で優勝しているミン選手。右ルート完登。

身長はラモン選手に次ぐ161㎝。『小さな巨人』の異名は伊達ではありません。

フランスチームのエース、ロマン・デグランジェ選手。同じく完登。フランス勢強し!!

右ルート、トリで登場した安間選手。完登で飾れるか…。


この柔軟性。すばらしい。


トッ

ター!!

2本とも完登。1位タイです。

これで男女ともに予選が終了。
ここから各26名の選手が準決勝へとコマを進めることになります。
楽しませていただきました。
9:30に幕が開き、16:30までトップクライマーたちの闘いが続いたわけですが、あっという間。
さて、明日はどんなドラマが生まれるやら。

明日は9時開場。
8時には行っとくかな。
つづく

でも岐阜からだったら結構近いんですね。
車を通して入る寒気を感じながら中央道を走り、うねりうねった首都高を抜け、無事0時過ぎに千葉到着。
そのまま一夜を明かし、郊外へ。
印西市松山下公園総合体育館。


館内奥に待ち受けるのは…

今大会の戦場となる15mのウォール。

左壁には千葉国体のマスコット『チーバくん』の姿も。もちろんこれもホールドです。

壁の基部に目を移すと、既にひとり黙々とルートのオブザベーションをする選手が。

現在ワールドカップランキング12位の小林由佳選手です。
10代のころから国内大会では負け知らずだった彼女も、もうコンペティターとしては円熟期。
今季も何戦か決勝進出しており、今大会でも上位が期待される選手です。
ちなみにオブザベーションというのは、ルートの観察(直訳どおりですが…)。
こういった大会では、基本的に1つのルートにつき1回しかトライするチャンスが与えられません。
そのため、最後まで落ちずに完登するためには、このオブザベーションでしっかりとルートの中での動きをイメージし、組み立てていくという作業が非常に重要になってくるわけです。
また今回、予選ではフラッシング方式というものが採用されています。
これは、トライは1回のみだが、他人の登りを見たりすることは許されるというもの。
選手は、事前に映像で自分たちが登るルートのデモクライミングを見せられており、この映像、また他の選手の登りを見て、自分のクライミングに備えます。
あと、判定の基準について。
よく『スピードを競うんですか?』と訊かれますが、さにあらず。
判定の基準は高度。つまりどれだけ高く登れたかです。
選手複数名が、予選、準決勝、決勝と全くの同高度であった場合、タイム、つまりスピードが判定基準となる場合がありますが、そういったケースは極めてまれです。
ただし、制限時間は存在します。
その時間内に登れなかった場合、タイムアウトになった時点での高度が成績となります。
制限時間は大会によってまちまちですが、だいたい6~8分が一般的です。
…というルールを踏まえた上で、会場へと戻ります。
ウォール左にはオーロラビジョンが設置され、選手の表情もよく見ることができます。

すべては整いました。
さぁ開始です。

右ルートは日本人選手一番手、遠藤由加選手。
クライミング歴20年以上の大ベテランです。
右ルートの最初の核心は、青のスローパー(丸っこい掴みどころのないホールド)から連続するカチ(薄っぺらくて細かいホールド)の処理。

多くの選手がこのパートの餌食となり、遠藤選手もここで力尽きてしまいました。
左ルート一番手、ロシアのマラミド・エフゲニア選手。

左ルートの核心の一つ。黄色い大きな鼻ホールドの処理。
マラミド選手はうまく足技を駆使して突破していきました。
ロシアは今回男女とも数名が参戦していますが、全体的に体が強い。体操選手を思わせる大きくてもブレない動きを繰り出してきます。
右ルート、太田理裟選手。最初の核心をうまく突破。上部ハング帯に突入していきます。

ロングリーチを生かし、ぐいぐい高度を稼ぎます。

右ルートで一番印象的なムーブ。体を反転させ、足を先に上部へと送ります。

ここもうまく突破し、終了点近くまでたどり着きましたが、惜しくもフォール。

左ルート、スロベニアのミナ・マルコビッチ選手。2011年の年間チャンピオンです。

抜群の安定感で高度を上げていきますが、この終了点間近で痛恨のフォール。

これまた有力選手登場。韓国、キム・ジャイン選手。

先週行われたワールドカップ韓国大会では優勝している彼女。こちらも安定感ハンパないです。

ウォームアップするかのように、最後まで危なげなく完登。格の違いを見せつけます。

左、スロベニアのマヤ・ビドマー選手。右、小田桃花選手。

マヤ・ビドマー選手は、5年前に埼玉で行われたワールドカップ加須大会の優勝者。
スロベニアは国こそ小さいものの、岩場は豊富にあり、歴史的にも強いクライマーを輩出してきています。
ちなみに今年のワールカップ最終戦は、スロベニアのクラニで行われます。
ユースでは負け知らずだった小田桃花選手。
近年大人の大会でも頭角を現し始め、今年のワールドカップ in イムストでは日本人女性としては初の優勝。
9月の世界選手権でも4位と現在若手注目度No.1の選手です。
その小田選手、あれよあれよといううちに最上部到達。

そのまま完登!!

うれしそう。

左ルート、マヤ・ビドマー選手も完登。こちらは小田選手とは対照的にクールです。

フランスより参戦。シャーロット・デュリフ選手。

岩場では女性初のグレード8C(5.14b)のオンサイト(初見一発で登りきること)にも成功している非常に強いクライマーです(DVD『THE FANATIC SEARCH 2』収録)。
しかし、軽々と抜群のうまさで登っていくもタイムオーバーになってしまい、右ルート完登はならず。
フランスは、今大会では彼女の他にも男女4名が参戦。
過去数年ではスペイン、オーストリア勢に押され気味な感がありましたが、近年、選手が上位にもくいこんできており、クライミング大国フランスの復権がうかがえます。
fromオーストリア、ヨハンナ・エルンスト選手。

DVD『PROGRESSION』であどけない表情を見せていた彼女ももう二十歳(まだ?)。
ここ十年ほどで台頭してきた新興クライミング大国、オーストリアのトップクライマー。
精密機械のような無駄のない動きで各パートをこなしていきます。
そしてついに登場!!

情熱大陸でもおなじみ、野口啓代選手。
現在の彼女の専門はボルダリングですが、今回の印西大会に合わせ、リードにも力を入れてきたよう。
今、その成果が問われます。
軽やかにステップを踏むかのように登りこなし


レストポイントではしっかりサービスという余裕っぷり。

完登~!! ブレた~。

さすがに沸かせてくれます。

そして小田選手、左ルートも完登!! これでパーフェクト。

マヤ、ジャインもそれに続きます。相変わらずクールなマヤ。


左ルート完登を逃したミナも右は難なく完登。

負けじと2本目の右ルート完登にも期待がかかる野口選手。

上部の動き。まずクロスムーブで右手をとり

足をほどき

オレンジホールドに狙いを定め


ポン

クル。

そして、絶妙な足技を駆使しながら上部をうかがい…


完登!!

野口選手の完登で盛り上がりが最高潮に達したところで女子予選は終了。
男子予選のルートセットに入ります。

ワールドカップのような国際大会には、専門資格を持ったセッターがルートセットを行います。
セッターは複数名から構成されますが、セッターのリーダーことチーフルートセッターは、必ず開催国以外の国から招聘されることになっています。
当然ながら、このルートセッターたち無くして大会は成立しえません。
華やかなコンペの舞台は、彼ら、ジャッジはじめ裏方の腐心と奮闘の上に成り立っているのです。
男子ルート完成。

進行をスムーズに行うため、一部女子ルートとホールドが共有されています。
さぁ男子予選開始です。
一番手は誰かな~・・・・・・って、え?

えええええええええ~!!!!

いきなりこの男かい。
スペインのラモン・ジュリアン・プッチ

クライミングは身長がある方が有利と思われている方は、ラモン選手を見て驚愕することでしょう。
なぜなら彼の身長、159㎝です。
遠いホールドをとるという点において、身長が高いことが有利に働くことは事実です。
しかし、低い人間でも体を一直線の棒のようにブレることなくコントロールできる強靭な体幹があれば、その弱点を克服することは可能です。もちろん簡単なことではありませんが…。
そして、視点を替えれば身長が低いことは逆に有利にも働きます。
身長が低いということは、相対的に体が軽いということ。
クライミングはパワーウェイトレシオが重要ですから、軽ければより重力の影響を受けずに登れるということになります。
事実、ラモン選手の動きにはとにかくブレがない。
身長のある選手が足が離れてしまうような局面でも彼の足は離れていないこともしばしば。
そして、『無限』とも称される高い持久力。
長く傾斜のあるルートとなれば、無類の強さを発揮します。
パチ・ウソビアガ、エデュー・マリン、上位常連だったスペイン選手が姿を消していく中、31歳という、アスリートとしては決して若いとは言えない年齢にもかかわらず上位に居続ける男。
個人的に一番応援したい選手です。
…なんてことを書いているうちにスイスイ高度を上げるラモン選手。


終始危なげなく終了ホールドへ。

当然完登。アップにもなっていない?

設定したルートが簡単すぎるのでは?…というほどの登りでしたが、後に登場する選手の多くは苦戦。
樽崎智亜選手

小澤信太選手


ラモン選手のパフォーマンスがいかにすごかったかがうかがい知れるというものです。
そんな中登場した、単身カナダから参戦の選手。
サスケの心の師、トレーニングマニアことショーン・マッコール選手。

某映像投稿サイトでは、このショーン選手の超絶トレーニング映像を見ることができます。
ダウンロード禁止法をはき違えたサスケが、直前に慌ててその映像を永久保存したというのはあくまで噂です。
そのショーン選手。今までの沈黙を破るかのように右ルート完登。

カッコええ。

そして、安間佐千選手のライバル、オーストリア、ヤコブ・シューベルト。

やはり完登。さすが2011年ワールドチャンプ。

さぁ、そのライバルの完登を横目に発進。

安間佐千選手。

ホームであるという地の利はありますが、その分プレッシャーも相当のものだと思います。ガンバ!!

左ルート、上部核心部に差し掛かっていきますが、

余裕でクリア。

多くの選手が取り損ねたハリボテ上のホールドも取り

そして終了点直下で余裕のレスト。

完登!!

ちょっとホッとしたような表情。

ラモン選手、2本目。そして、右はショーン選手と並ぶトレーニングマニア、マグナス・ミトボ選手。

ノルウェーから単身参加のマグナス選手。今季はコンスタントに好成績を収めており、やはり当然の完登。

…で、お隣も。

ロシア人選手2人の共演。左はイワン・カウロフ選手、右はミハイル・チェルニコフ選手。

ラモン選手の陰に隠れてしまいましたが、ミハイル選手は左ルート一番手で登場し、見事完登しています。
オーストリア、マリオ・レクナー選手。左ルート完登。

日本人選手も健闘が目立ちます。ハリーこと芝田将基選手。

非常に高いポテンシャルを持つことで知られる芝田選手。完登は逃すものの、ルート最上部まで迫ります。

インパクトのある赤髪で登場した沼尻拓磨選手。

女子ルートでも使われていたこの青と黄のハリボテですが、女子のそれと違うのは、右端のピンク以外は全くホールドが付いていないということ。
つまりハリボテそのものをホールドとして使わなければならないということです。
こういった箇所では、高い全身の協調性が要求されます。
単純に指が強いとか、足置きがうまいとかでは切り抜けられない局面です。
そこをうまく越え、沼尻選手、巧みなレスティング。

観客にアピールして沸かせる藤井快選手。

そして、その藤井選手の隣、左ルートにヤコブ。

完登。

不敵。

国体では、そのひょうきんなキャラでつねに観客を沸かせてくれる尾形和俊選手。

ちょいちょい振り向いてアピールw

フランス、マニュエル・ロマン選手。完登。

右ルート、松島暁人選手。ボルダリングのワールドカップでは、表彰台にも立っています。

左ルートではテンポよく高度を稼ぐも不意落ちしてしまった松島選手ですが、右ルートでは持ち前のスピーディーで胸のすくような登りを展開。
あっという間に上部到達。

完登か…と思われたが終了点間際でフォール。

韓国、ミン・ヒュンビン選手。

キム・ジャイン選手同様、先週のワールドカップ韓国大会で優勝しているミン選手。右ルート完登。

身長はラモン選手に次ぐ161㎝。『小さな巨人』の異名は伊達ではありません。

フランスチームのエース、ロマン・デグランジェ選手。同じく完登。フランス勢強し!!

右ルート、トリで登場した安間選手。完登で飾れるか…。


この柔軟性。すばらしい。


トッ

ター!!

2本とも完登。1位タイです。

これで男女ともに予選が終了。
ここから各26名の選手が準決勝へとコマを進めることになります。
楽しませていただきました。
9:30に幕が開き、16:30までトップクライマーたちの闘いが続いたわけですが、あっという間。
さて、明日はどんなドラマが生まれるやら。

明日は9時開場。
8時には行っとくかな。
つづく
